香りマーケティングとその効果・巧みなのに嫌味なく購買を促す

香りマーケティングとは・巧みなのに嫌味なく購買を促す

 

ここでは香りマーケティングについて「ブランディング・記憶・アイデンテティ形成」といった3つの視点と、それを支えるエビデンスについてお伝えしています。

 

 

 

香りマーケティングとは・その実態

 

 

エッセンシャルオイルと呼ばれる天然の香料は、人間の感情や気分に働きかけ行動を促す力を持っています。

 

2000年代前後国内ではレクサスが先駆けてこのような香りの力を活用、そして今では多様な商業施設が香りを流すサービス(アロマ空間デザイン)を採用してきました。

 

 

これらの企業は次の4つのような視点で自社の商売を有利に運ぶためにアロマ空間デザインをマーケティングの一環として採用しているのです。

  • ブランディングの一環として
  • その場の記憶を鮮明に残す
  • 企業のアイデンテティ形成

 

まずはこの3点について詳しくお伝えして行きますのでご参考ください。

 

 

 

香りマーケティングとは@ブランディングの一環として

 

ブランディングは自社(製品も含む)のイメージアップ戦略目的で行われます。自ら語らず相手にスゴイと思わせる手法です。

 

一方マーケティングは「売り上げUPの目的で行われる総合的な戦略」です。自ら優秀を語って相手に納得させる手法を活用します。

 

 

 

ブランディングとマーケティングは以下のような視点で見たときに違いはあるものの、いずれも企業の業績向上のために行われることには変わり有りません

 

 

 

香りによるブランディングについて、上の表の項目を検討するならば以下のようになります。

香りによるブランディングの一例
目的:ファン意識形成 企業を象徴するかのような香りを店舗に漂わせて「このお店が好き」と思えるファンを増やす
重視:WHY 「このお店にいると香りでリラックスして長居してしまう。だからこのお店がお気に入り。」を顧客の中に形成
役割 NO1よりは顧客それぞれのONLY ONEとしての存在・その中の要素として企業独自の香りが存在
時間:長期 顧客の中に企業イメージが根付くまで一定時間同じ香りを提供
視点:マクロ 顧客とのタッチポイント全てにおいて一貫したブランドのイメージ形成を行う

 

 

 

もし上のような香りによるブランディングを、香りのマーケティングに転用してみるならば以下のようになるのです。

 

香りマーケティングの施策の「例」
目的:消費者の反応 新規顧客へのDMの紙に企業を象徴するかのような香りを添付し、DMへの反応を高める
重視:HOW どうすればプロモーションの売り上げの増大につながるか?の「一手法」として活用
役割 NO1の存在
時間:短期的取り組み プロモーション期間や予算内「限定の取り組み」として香りを取り入れる
視点:ミクロ 個々のプロモーションや試作の特徴に合わせて活用。必ずしも統一感はなくても構わない

 

 

 

ブランディングとマーケティングは必ずしも切り離して考えられるものでもありませんが、香りという感覚体験を顧客が体験したとき、企業の業績向上という目的達成にも有利に働くのは枚挙にいとまがないほど。

 

その最たる例がハワイです。

 

 

 

著名なマーケター森岡毅氏は「ハワイは戦後のアメリカのブランド戦略の賜物」と言います。

 

ハワイは「疲れたな非日常を味わいたいな」と思ったときに、その情景がバチンとはまるように巧妙に設定され尽くされました

 

以下のような いかにも日本人が考えるハワイアンなイメージは「非日常の開放を記号化したブランド戦略でありマーケティングの産物」なのです。

 

 

巧妙過ぎるハワイのブランディング
  • プルメリアで作られたレイ(南国らしさを香りで演出)
  • フラダンス(真似しやすいように観光用に簡略化・ブラッシュアップ)
  • ハワイ料理(観光用に開発)
  • 感情を掻き立てる空港からホテルに向かうまでのパームツリーや白い砂の海岸(白い砂は外から持って来て撒かれています)

 

 

 

「訪れたい場所として価値を高める取り組み」にプルメリアの香りがブランディングに一役買っているのは興味深い所でもあります。
※これがまたマーケティングの一施策としてハワイに訪れた人にプルメリアの花が贈られることもあるでしょう。

 

 

 

ブランディングとして、そしてマーケティングの一環として香りが採用されるのは、「顧客に感覚体験を提供すれば圧倒的に有利だから」、そして商品やサービスに関連する香りや匂いを同時に嗅いだほうが商品サービスへの関心・愛着が高まるからです。

 

 

 

 

 

香りマーケティングとはAその場の出来事を鮮明に記憶に残す

 

 

香りは長期記憶や感情に深く結び付く性質があり、それが積み重なるほど商品やサービスの情報自体も同時にアップデートされます。

 

パンの匂いの合成香料を店舗の外に噴霧して誘引・こうしたマーケティングで成功するお店もあるほど。

 

似たような匂いだけを嗅いで商品やサービスを思い出させて嗜好行動を促すことも珍しくありません

 

 

 

このように特定の香りや匂いが関連する記憶や情動を呼び起こすことをプルースト効果と呼んだりします。

 

 

 

 

香りという嗅覚体験によって満足度が上がり、商品やサービスの使用体験の質が上がれば、企業やサービス商品そのものに興味関心愛着が沸くのはあまりに自然な流れです。

 

こうした視点で香りをマーケティングに組み込むと、きわめて負荷のない戦略的取り組みと言えるのではないでしょうか。

 

 

 

 

長期記憶と香りの関係

 

匂いや香りは大脳辺縁系で認識され、香りに対する価値情報を記憶、特に長期記憶は大脳辺縁系の海馬に保存されるという。

 

外側が言語など知的処理を行なう大脳新皮質、真ん中が本能・感情を司る大脳辺縁系、内側が体の機能の司令塔脳幹

 

 

 

香りマーケティングとはB企業のアイデンテティ形成

 

香りマーケティングで忘れてはならないのは、企業のアイデンテティの形成に大いに役立つ点です。

 

 

上質な製品のディティールを伝えるためには豪奢なバラを活用し、親しみやすさを感じてもらいたいならばシトラスと言ったように香りは企業のアイデンテティの要素として訴求できます。

 

 

またこれはとりもなおさず企業の独自性を打ち出し「他のお店の商品サービスだったら絶対に提供できない体験」となるのです

 

 

ブランディングで大成功したシンガポール空港は、マーケティングの一環としてエキゾチックな香りを機内に噴霧しており、これも「らしさ」の演出と言えましょう。

 

 

 

 

 

 

香りマーケティングを支えるエビデンス

 

 

植物から採取されるエッセンシャルオイルは数百の分子からできており、呼吸などにより体内に取り込まれて体中をめぐりリラックスやリフレッシュなど多様な効果を心身にもたらします

 

お店に入った瞬間から心を解きほぐすような香りを店舗に満たしていれば、くつろぎを提供できることになりスタッフとの会話も弾み売り上げの拡大も期待できるというもの。

 

 

 

この点についてもう少し詳しくお伝えするために2つの最新の報告をご紹介しながら香りマーケティングの商業的有効活用についてお伝えします。

 

 

 

芳しい香りをマーケティングに活用すれば嗜好行動が起こる

 

一つ目の報告は好印象の香りを意図的に選んで商業的アドバンテージを狙うといった内容です。

 

 

 

好印象の香りを意図的に選択すれば商業的に有利

  • 匂いや香りはいくつもの嗅覚受容体を刺激し、個々の嗅覚受容体ごとに「好き」「嫌い」といった価値情報を持っている
  • 特定の匂いや香りに対するリアクションは、個々の嗅覚受容体の価値情報の足し引きの結果で決まる
  • 嗜好行動を引き起こす香りを活用すれば「よりかぐわしい匂い・香り商品」として認知され商業的に有利

出典:2019年東原 和成Contribution of individual olfactory receptors to odor-induced attractive or aversive behavior in mice

 

 

つまり上の報告は「より多くの人が好む香りをマーケティングに活用すると有利」と伝えているエビデンスと言えます。

 

 

 

 

店舗に不快な匂いが漂うと即退出される・不快な匂いに0.4秒の拒否反応

 

次は、「不快な匂いへの拒否反応について」の報告です。

 

 

 

 

不快な香りを避けないと即退出される
  1. 匂い物質が嗅覚に刺激として伝わり、これが中枢神経に伝わって「回避行動」に至るまでの所要時間は0.4秒
  2. 1の行動は無意識で行なわれており、経験則による認知的な行動ではない
  3. 嗅球は大脳辺縁系(嗅脳とも呼ぶ)と匂い物質の情報をやりとりし、大脳辺縁系は危険を検出する役割を果たす

 

出典:2021年Johan N. LundstromらThe human olfactory bulb processes odor valence representation and cues motor avoidance behavio

 

 

 

 

二つ目の報告は、「不快な匂いや香りを放置するとマーケティング的にかなり不利」という課題を伝えています。

 

店舗という顧客を迎える場が店舗特有の好ましくない匂いになっているとすれば、それは「店舗から無意識に去る」といったような回避行動を促しかねないからです。

 

 

 

 

アンケートに見る好印象の香り

 

 

「好ましい香りでマーケティング上いいことが起こる」という好ましい香りとは何か?以下日本人を対象に好きな香りについて回答してもらったアンケートをランキング形式で紹介しますので、ご参考ください。

 

 

 

日本人が好きな香りランキング

  1. レモン
  2. ラベンダー
  3. オレンジ
  4. バラ、金木犀(同列4位)
  5. ヒノキ
  6. グレープフルーツ
  7. コーヒー
  8. ライム
  9. ゆず
  10. せっけん
  11. ミント
  12. ジャスミン
  13. 緑茶
  14. サンダルウッド
  15. 沈丁花
  16. バニラ
  17. 林檎
  18. シナモン
  19. 沈香
  20. カモミール
  21. イチゴ
  22. メロン
  23. みかん
  24. クチナシ(ガーデニア)
  25. ローズマリー
  26. マスカット
  27. レモングラス

出典:朝日新聞2013年4月13日 N=1311

 

 

 

弊社のアロマ空間デザイン施行の経験上ですが、柑橘や果物のように日常的に嗅いでいる香りほど馴染みがあって万人に好かれやすいという実感があります。

 

また、都市部で生活する人ほど森林の香りを求める傾向が強いようです。

 

 

 

 

 

香りマーケティングで今求められる「らしさ」を表現

 

スマホやパソコンの長時間利用により現代人は慢性的にデジタル疲れしており、2020年からコロナが影響して身近な環境を快適にしようとする欲求も高まりました。

 

つまり2020年以降ストレスフリー・安全安心・快適性という傾向が香り市場でも強まっているということ。

 

 

 

香りマーケティング協会渡辺昌宏氏は2020年以降のマーケティングを香りという視点で見たときに、特に以下7つのキーワードを挙げられると言っています。

 

2020年の以降の香りマーケティングのキーワード

  • 分香:適材適所の香りの適用・香りの濃度の調整など
  • 見える化:「密かに香りを忍ばせる」よりも、「使用している香りを絵図などで明確化」
  • 伝える化:香りについての方針(セントポリシー)を掲げる企業が増える
  • 差別化:他社との違いを明確化するために香りを使う
  • 国際化:人種ごとに馴染みある香りを提供
  • 変化(多様化):それぞれの「好き」を応援
  • 進化:ドライバーの体調によって香りが変化する自動車など

2019年香りデザイン東京特別講演会より

 

 

 

 

この7つのキーワードから、具体的な香りマーケティングには企業独自の香りを生み出すのがおすすめ。

 

この理由は前述してきましたように、企業のアイデンテティ・商品サービスに関連する感覚体験が提供されると自然に嗜好行動を起こしやすいからです。

 

 

 

五感のうち最も重要なのは視覚ではありますが、膨大な情報の中で特定の情報が記憶されるにはよほどインパクトがないと記憶に残りません。

 

視覚の次に重要と言われる嗅覚は、商品サービスに関連する香りであれば長期的な記憶に残りやすいという性質もあります。

 

 

 

 

 

弊社では企業独自の香りを抗菌効果やリラックス作用を持つ天然精油で製作し、商業施設のすみずみに漂わせるアロマ空間デザインというサービスをご提供していますので、よかったら下記をご参考くださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼ほかの参考

 

*1東北大学大学院 谷本拓教授による動物での回避嗜好行動の実験がある。
砂糖と電気ショックそれぞれを与える前に別な匂いを嗅がせ、電気ショックの匂いについては回避行動を起こす、砂糖の前の匂いについては嗜好行動を起こすという。

 

宮崎大学農学部教授新村芳人

 

 

 

 

参考

 

 

なお、前述した東原和成教授らの報告の概要は以下の通り。

 

 

出典:東京大学 大学院農学生命科学研究科

 

ムスコン(ムスクの合成香料)は高感度MOR215-1と低感度MOR214-3のいずれも活性化、このとき嗜好行動が起こる

 

 

Z5−14:OHの場合のリアクションは以下の通り

  • 高感度Olfr288単独が活性化されるとだと嗜好行動
  • 低感度OlfrTs単独が活性化されると回避行動
  • 高感度Olfr288と低感度OlfrTsのいずれも活性化されると回避行動

 

 

 

  1. 嗅球
  2. 嗅上皮
  3. 嗅覚受容体

 

 

匂いや香りの正体は複数の分子の集合体です。ジャスモン酸とインドールが嗅覚受容体に付着すれば「ジャスミンの花の香りだ」というように認識されます。

 

 

 

 

実は匂いや香りは分子そのものが持っている物理的な特質ではなく、私たちの知覚が生み出しています。つまり匂いや香りの感知は知覚で起きている出来事に過ぎません。

 

下のように「@香り分子が嗅覚受容体に付着→A嗅球に刺激が伝わる→B2の情報が大脳に伝わる」といったように脳内での情報伝達で香りが認識されているだけなのです。

 

 

 

 

 

 

画像の出典

  • *:ar-marketing.jp
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