香りマーケティングとは・巧みなのに嫌味なく購買を促す
ここでは香りマーケティングの概要について「販売促進・顧客満足向上・ブランディング・記憶・アイデンテティ形成」といった5つの視点についてお伝えしています。
香りマーケティングの概要
エッセンシャルオイルと呼ばれる天然の香料は、人間の心身に働きかけて感情を揺さぶったり行動を促す力を持っています。
香りマーケティングはこのエッセンシャルオイルの力を活用、ほかのどんなものとも違う価値を創造、企業の売り上げ・販売活動などに役立てる取組みのことを言います。
2000年代前後国内ではレクサスが先駆けてこのような香りマーケティングを活用、そして今では多様な商業施設が香りを流すサービス(アロマ空間デザイン)を採用してきました。
lexus.jp
なぜ今香りマーケティング?
現在の消費者は以下のようにWEBと実店舗を行き来しながら商品やサービスについて理解を深めるようになっており、「購入するならぜひこのお店で」といった動機も機会もどこか失われつつあります。
いざ購入というタイミングのときに「WEBから購入してもいい・お得だったら実店舗のほうで購入」といったように掴みどころのないプロセスを辿りながら商品が入手される。
NEWSPICKS配信の図を改変
モノや情報があふれ、視覚に訴えるだけでは消費者は行動しなくなっており、「五感を組み合わせたマーケティングで訴求する取組み」が急増しました。
特に五感のうち嗅覚は視覚の次に訴求しやすいと言われています。
Martin Rindstrome Brand Scent
そして香りのマーケティングについては次の5つのような視点で消費者に購入場所として選んでもらうために採用されているのです。
まずはこの5点について詳しくお伝えして行きますのでご参考ください。
香りマーケティングとは@販売促進
エッセンシャルオイル(アロマ)と聞いてリラックス効果を想像する人は多いように、0.05秒でリラックスを促します。
実店舗の場合は、顧客の警戒心を解くだけでなく、スタッフ様との会話が弾んだりサービスへの受容性を高めるなどして販売促進を後押しするのです。
香りマーケティングとはA顧客満足度の向上
クリニックやカーディーラーでの定期点検など、サービスを受けるために不可欠な待ち時間には、誰もが無意識にイライラしてしまいます。
また、消毒液やタイヤのゴムの匂いなど商業施設特有の匂いなども気になるときは気になってしまうものです。
実店舗で香りマーケティングを採用するならば、このような顧客満足を減弱してしまいかねない点についてもさわやかな香りで一掃、顧客満足の向上につなげます。
香りマーケティングとはBブランディングの一環として
ブランディングは自社(製品も含む)のイメージアップ戦略目的で行われます。自ら語らず相手にスゴイと思わせる手法です。
一方マーケティングは「売り上げUPの目的で行われる総合的な戦略」です。自ら優秀を語って相手に納得させる手法を活用します。
ブランディングとマーケティングは以下のような視点で見たときに違いはあるものの、いずれも企業の業績向上のために行われることには変わり有りません。
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香りによるブランディングについて、上の表の項目を検討するならば以下のようになります。
香りによるブランディングの一例 | ||
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目的:ファン意識形成 | 企業を象徴するかのような香りを店舗に漂わせて「このお店が好き」と思えるファンを増やす | |
重視:WHY | 「このお店にいると香りでリラックスして長居してしまう。だからこのお店がお気に入り。」を顧客の中に形成 | |
役割 | NO1よりは顧客それぞれのONLY ONEとしての存在・その中の要素として企業独自の香りが存在 | |
時間:長期 | 顧客の中に企業イメージが根付くまで一定時間同じ香りを提供 | |
視点:マクロ | 顧客とのタッチポイント全てにおいて一貫したブランドのイメージ形成を行う |
もし上のような香りによるブランディングを、香りのマーケティングに転用してみるならば以下のとおりに。
香りマーケティングの施策の「例」 | ||
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目的:消費者の反応 | 新規顧客へのDMの紙に企業を象徴するかのような香りを添付し、DMへの反応を高める | |
重視:HOW | どうすればプロモーションの売り上げの増大につながるか?の「一手法」として活用 | |
役割 | NO1の存在 | |
時間:短期的取り組み | プロモーション期間や予算内「限定の取り組み」として香りを取り入れる | |
視点:ミクロ | 個々のプロモーションや試作の特徴に合わせて活用。必ずしも統一感はなくても構わない |
ブランディングとマーケティングは必ずしも切り離して考えられるものでもありませんが、香りという感覚体験を顧客が体験したとき、企業の業績向上という目的達成にも有利に働くのは枚挙にいとまがないほど。
その最たる例がハワイです。
著名なマーケター森岡毅氏は「ハワイは戦後のアメリカのブランド戦略の賜物」と言います。
ハワイは「疲れたな・・・非日常を味わいたいな…」と思ったときに、その情景がバチンとはまるように巧妙に設定され尽くされました。
以下のような いかにも日本人が考えるハワイアンなイメージは「非日常の開放を記号化したブランド戦略でありマーケティングの産物」なのです。
- プルメリアで作られたレイ(南国らしいイメージを香りで演出)
- フラダンス(真似しやすいように観光用に簡略化・ブラッシュアップ)
- ハワイ料理(観光用に開発)
- 感情を掻き立てる空港からホテルに向かうまでのパームツリーや白い砂の海岸(白い砂は外から持って来て撒かれています)
「いかにも南国らしいイメージ」としてプルメリアの香りが一役買っているのは興味深い所でもあります。
ハワイ旅行から数年たってもスーツケースからプリメリアの花の香りが香っているかのような錯覚になるのは不思議なことではありません。
ブランディングとして、そしてマーケティングの一環として香りが採用されるのは、「顧客に感覚体験を提供すれば圧倒的に有利だから」、そして商品やサービスに関連する香りや匂いを同時に嗅いだほうが商品サービスへの関心・愛着が高まるからです。
香りマーケティングとはCその場の出来事を鮮明に記憶に残す
香りは長期記憶や感情に深く結び付く性質があり、それが積み重なるほど商品やサービスの情報自体も同時にアップデートされます。
パンの匂いの合成香料を店舗の外に噴霧して誘引する取り組みがあるなど、似せた匂いによって商品やサービスを思い出させ嗜好行動を促すことも珍しくありません。
このように特定の香りや匂いが関連する記憶や情動を呼び起こすことをプルースト効果と呼んだりします。
香りという嗅覚体験によって満足度が上がり、商品やサービスの使用体験の質が上がれば、企業やサービス商品そのものに興味関心愛着が沸くのはあまりに自然な流れです。
こうした視点で香りをマーケティングに組み込むと、きわめて負荷のない戦略的取り組みと言えるのではないでしょうか。
香りマーケティングとはD企業のアイデンテティ形成
香りマーケティングで忘れてはならないのは、企業のアイデンテティの形成に大いに役立つ点です。
上質な製品のディティールを伝えるためには豪奢なバラを活用し、親しみやすさを感じてもらいたいならばシトラスと言ったように香りは企業のアイデンテティの要素として訴求できます。
またこれはとりもなおさず企業の独自性を打ち出し「他のお店の商品サービスだったら絶対に提供できない体験」となるのです。
ブランディングで大成功したシンガポール空港は、マーケティングの一環としてエキゾチックな香りを機内に噴霧しており、これも「らしさ」の演出と言えましょう。
弊社では企業独自の香りを抗菌効果やリラックス作用を持つ天然精油で製作し、商業施設のすみずみに漂わせるアロマ空間デザインというサービスをご提供していますので、よかったら下記をご参考くださいませ。
長期記憶と香りの関係
匂いや香りは大脳辺縁系で認識され、香りに対する価値情報を記憶、特に長期記憶は大脳辺縁系の海馬に保存されるという。
外側が言語など知的処理を行なう大脳新皮質、真ん中が本能・感情を司る大脳辺縁系、内側が体の機能の司令塔脳幹
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- *:ar-marketing.jp