モノの購入の意思決定はどのように行われている? ソマティックマーカーに見る商空間での香り演出
お客様に購入動機らしきものをお聞きになり、あまりにあっけない一言フレーズが飛び出してきて驚いてしまった経験はありませんか?
コカ・コーラやユニリーバのような誰もが知っている巨大企業をプロデユースしていることで有名なマーティンリンストローム氏によると「スタバのチャイラテ・I Phoneの新モデル、買った理由を聞かれても誰一人まともに答えられない。せいぜい買いたかったからというような言葉が出るだけ」なんだそうです。
これは強烈に現実を物語っていると思います。
マーティンによると「アンケートで回答された購入動機の内容」と、脳スキャン※でわかった脳の動きはかなりかけ離れているそうなのです。
※脳に機器をつけて脳領域のどこが活発になっているか?を調査
実際、私たちが何か商品を購入するときにどんな意思決定が頭の中で行われているのか?
マーティンがその著書buy・ologyの中で解説・賛同しているソマティックマーカー説によって現代人の消費行動における意思決定を紐解いて見ようと思います。
報酬と罰に関する体の記憶でモノの購入判断をしている・ソマティックマーカー
例えば「しっとりする髪質」の向上を目的にしたシャンプーやコンディショナーを探そうとして、ドラッグストアに立ち寄ったとします。
そこで私たちはどんな判断をして最終的に「髪質を向上させてくれるであろう商品」を選ぶのでしょう?
購入でよくありがちな脳内での独り言を挙げてみたいと思います。
数日前に見たドラマに入っていたCMでハリウッド女優スカーレットヨハンソンがグレートな金髪の髪をかき分けて微笑み思わずうっとりしてしまった、このシャンプーやコンディショナーを使えばスカヨの髪質が手に入る【報酬】かもしれない。
数年前に使っていたノンシリコンのヘアケア剤は髪質を荒らして(髪にいいことをしているとおもっていたのに)最悪な事態に追い込まれた【処罰】のだから、輝きを害なく与えてくれる化学物質シリコンはある程度使うべき【報酬】だ。
前回試しに買ってみたヘアケア剤はコンディショナーを使っても髪がギシギシする【処罰】し、夏は湿気で猫毛が爆発して最悪だった【処罰】…
だから今私の目の前にある 「1秒でヘアサロンの輝き」と謳うヘアパック剤のお試し品が付いている【報酬】シャンプーを試さない手はないのでは・・・・
とは言え商品の値札のすぐ隣にさりげなく付いているヘアケア剤のテスター!これなんともよくてシャンプーの時間が極上になりそう【報酬】・・・
実際は意外と数分も経たずに「最も自分に便益を与えてくれそうな何らかの商品」を手に取ってしまっていることが多いでしょう。
アントニオ・ダマシオはこのような頭の中で繰り広げられる無意識・猛スピード・超高速早送りで行われる脳内での一人会話が、現代人の消費行動の意思決定を導いており、言ってみれば過去に身体が受け取って生まれた情動的な身体反応だと言います。
報酬と処罰に関する過去の体験を絞り込んで「最も苦痛を伴わないであろう現状」を生み出すべく私たちを導くのだと言うのです。
情動的な身体反応が消費行動の意思決定を導くことはソマティックマーカーと名づけられています。
商空間で報酬と罰に関する過去の情動を包み込む香り演出
さてこの報酬と処罰に関する情報処理が行われているのは主に下にある前頭前野という脳領域です。
出典:毎日新聞
さらに言うと先ほどの情動は扁桃という場で生み出されており、扁桃は報酬か罰かを判断する情報処理にかかわり、香りを嗅ぐとこの扁桃が刺激されるのが分かっています。。
私たちの毎日で不快なこと嫌なことから避けようとする回避行動※と心地よい便益を与えてくれるものを選ぼうとする行動はごく当たり前のように起こっており、これも扁桃が大きくかかわるのです。
※例えばお腹を下してしまった魚介に気分が悪くなるような反応がこれにあたる
敏腕マーケターでありコンサルタントであるマーティンリンストロームは著書の中で「香りによって商空間のムードが40%改善した」と言及しており、弊社商空間のためのアロマ空間デザインはこうした五感に響くマーケティングを重視しています。
※詳しくはミルウオードブラウン社の大規模調査による。快い香りが幸せな記憶や幸福感を呼び起こすという
具体的には商業施設の商品サービスに親和性の高い香りをオリジナルで作成し、情動を表出する扁桃をケア・顧客の幸福感を想起させ、心地よい気分を高めながらお店のスタッフと接するための場つくりをします。
その詳細は以下で解説していますのでご参考ください。
>>香りを嗅いで幸福感を掻き立てるアロマ空間デザイン
■参考書籍:
Martin Rindstrorm
- 五感刺激のブランド戦略
- Buy・ology
- Brand Washed
博報堂 「五感」の時代