Exclucive

高額車のショールームが合成香料から切り替えた理由・ホンダモビリティ東北 泉松森店様が天然アロマを選ぶまで

今回お話をお伺いさせていただいたのは日頃からショールームのCS(顧客満足)向上を担う、株式会社ホンダモビリティ東北泉松森店の片岡様です。

「徒歩圏内にちょっと出けられる場所が少ない」という場のリアルに長い間試行錯誤された事例です。

そして合成香料がはらむブランドへの影響と、天然100%アロマがもたらすホスピタリティの本質を紐解きます。

合成香料から天然香料への変遷過程

1年半が費やされた膨大な試行錯誤

仙台市泉区松森は、昭和後期から平成初期にかけて誕生した住宅街(松陵・鶴が丘など)に隣接するエリアです。4号線沿いには多様な商業施設が立ち並び、車さえあれば非常にタイパ(タイムパフォーマンス)高く用事が足せる利便性の高さで知られています。

しかし「車での移動」と「歩きでの移動」は全く異なります。点検の待ち時間に徒歩圏内で一人で心地よく時間を潰せる場所・サードプレイスは多くないのがこの一帯のリアルです。

片岡様

ご来店されるのは家族連れではなくお一人で来られる高齢のお客様なので、雑誌なども高齢層のご健康などのトピックを取り上げた雑誌が多いんです。

お出かけできる場所が少ないので「点検の待ち時間が1時間あるからちょっと出かける」というのがなかなかできません。ショウルームで待たれている方が多いので、お客様にご満足いただけるような何かが欲しいよねと言うことで、たどり着いたのが香りでした

昔は雑誌や新聞を増やすということもやっていたのですが、でも「過ごしやすい空間を作るには香りだよね」となったんです。

しかしどういった香りがいいのかわからず、(幣香りサービス導入前に)たまたま訪問してくださった合成香料の会社のサービスを利用しました。

ショールーム用ではなく本来はトイレの壁に設置する合成香料の機器を店内に3箇所設置し、この香りだったらいいかなと思えるようなサボン系やローズ系の香りを試したりしました。

しかしやはりトイレ用の機器なのでショールーム全体に均一に香るわけではなく、機器の近くはニオイがきつくなってしまうこともあり、結局窓を開けたり(換気)、香りが出る間隔を調整してもみたのですが、キツイままでした。

このショールームに漂う合成香料の微調整に費やされた時間は1年半。これは「お出かけの場所が少なく店内で過ごされるお客様にできることは?」という問いに対するとてつもなく途方もない試行錯誤です。

お客様が店内で過ごす1〜2時間という目に見えない時間の質に対して、これほどの熱量で向き合い続けてこられた胆力に驚愕させられます。

天然香料への切り替え・合成香料との違い

このような紆余曲折を経て2026年2月末に弊社の天然アロマ(100%エッセンシャルオイル)による空間デザインへと切り替えが行われました。サービス導入後半年が経過し導入後の率直なご感想を伺いました。

片岡様

ほんのり香り・フワ―っとしてやわらかく・やさしい、これが合成香料と一番違う点です。

合成香料を使用していたときは座って長時間過ごされている方にとってやはりきつかったのではないかなと思います。匂いが強いと「あれ?!(ヒヤッとする)」と思うこともあったのですが、現在はそうしたことは全然なくなりました

【考察】なぜ高額商品を扱うショールームに合成香料ではなく「天然100%」なのか?

一般的に合成香料は驚くほど安価です。それに比べ植物から抽出される天然香料は価格は高額です。価格を見て店頭でテスターを試せば「合成香料で十分」と思われる瞬間は多々あるのではないでしょうか。

その価格の理由は以下の通りです。

わずか100mlの精油を採るために必要なオレンジは約150個、グレープフルーツは250個。今のスーパーでいずれも1個200円前後はします。

単純計算で100mlのエッセンシャルオイルには原材料となるオレンジの果実だけで3万円分。グレープフルーツは5万円分です。※ホンダ様にご提供している容量は1ケ月で125ml。

スーパーで売られている果実の価値以上が100mlに凝縮されていることになります。

昨今のフルーツの物価高騰と同様に、その高価な果実の皮を膨大な量、丁寧に圧搾して作られる天然100%のエッセンシャルオイルは、必然的にそれなりの価格です。合成香料よりは高額ですが「その価格分の果実や植物」がそのまま閉じ込められていると考えるのが自然です。

一瞬だったら確かに合成香料で不快は感じないかもしれません。しかし長時間の滞在となると合成香料は片岡さんのお話の通りの結果となります。

では合成香料を選び続けると、ほかにどのようなリスクがあるのでしょうか。

①ブランドイメージに直結する「嗅覚の記憶」

泉松森店様ショールーム展示車のN‐BOX JOY。今からアウトドアを始めたくなる楽し気な展示だからこそ、合成香料か?自然や本物が感じらる天然香料か?という選択は店舗のブランドイメージそのものを決定づける重要な要素になります。

合成香料の多くは日常的に気になる匂いを消したい場に活用されます。人間の嗅覚は五感の中で最も強く「記憶」と結びついていますので、どんなにきれいに整えられたショールームであってもそうした場所を無意識に想起させて長く記憶に刻まれます。

数百万、数千万円という高額な自動車を扱う洗練された空間にブランドイメージにふさわしい選択が不可欠です。

② 「心地よさ」と「不快感」の境界線

合成香料は特定の場所(ピンポイントな強いニオイ)を化学的に素早く消し去る(マスキングする)能力において、非常に優れた役割を持っています。それぞれの目的に特化したサービスが世の中にはたくさん存在します。

しかし「ニオイを消すための香りの強さ」と、「1〜2時間という長い時間をリラックスして過ごすための香りの優しさ」は、求められる役割が根本的に異なります。

合成香料を大きく広い空間全体に広げようとすると、どうしても場所によって濃淡ができたり、長時間の滞在において鼻や脳が疲れやすくなったりするという、ミスマッチが起きます。

知らない間にお客様の記憶に不快な記憶が刻まれ、ブランドの棄損が起こってしまったら元も子もありません。

③ 脳を疲れさせない、天然のホスピタリティ

一方で天然100%の香りは、呼吸と同じように体内に自然に溶け込み、長時間同じ空間にいても鼻が疲れることがなく、本質的な「居心地の良さ」を提供してくれます。

「合成か天然か」という知識がなくても(または一瞬で判断できない)、人間の身体はどちらが快適かを体感や本能的に見抜きます。泉松森店様が実感された「お客様へのヒヤッとする不安が消えた」という変化を前にして、それ以上の説明は不要かもしれません。

今回この合成香料との違いが体感や実感でよくご理解いただいたようで大変嬉しく思います。

泉松森店様のこれからのおもてなしの見える化

片岡様

定期点検で半年ごとにお越しになるお客様の中には、店内の香りを楽しみにされている方も結構いらっしゃいます。

だからこそ、ショールームに『今月はどんな香りが広がっているのか』が視覚的にも伝わるPOPがあるといいなと思っています。また、シニア層の男性のお客様でも心地よく感じていただけるような(深みのある)樹木の香りなどもあったら嬉しいです。

そんな嬉しいリクエストを頂き誠にありがとうございます。地域の特性を理解され、お客様の滞在価値を追求されてこられた泉松森店様にお店の名前が想起される深い森が感じられる香り、そしてPOPデータについてもご提供させていただきます。

お時間いただきまして誠にありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。

編集後記

自動車販売という本質的な業務がある傍ら、お客様の快適性を香りという点で1年半もの間費やされてきた片岡さんはプロ顔負けの胆力がある方です。普通だったら「もうこのくらいでいいかな」などといった妥協があってもおかしくない作業だったはずが、片岡さんの場合は違いました。

切り替え前に筆者がこちらのショールームにお伺いした際、店内に設置された合成香料の機器での香り演出は非常にスマートに計算された印象に思えました。だからこそその裏側にあった「きついニオイに課題を感じ微調整し続けた」という本当のお話を伺ったとき、快適性への追及レベルがそもそも本質的に別格だったのだと二重の驚きだったのです。その真摯な試行錯誤があったからこそお客様からの香りのお問合せなどにも繋がったのかなと拝察しております。

どれほど時代が変わろうとも、心を動かすのはいつだって『人が真摯に向き合い、生み出した仕事の結晶』です。真摯にお店作りに挑み続ける皆様の情熱こそお客様の笑顔に結びつく最大の理由です。

  • この記事を書いた人

GRACES

2011年の創業から、弊社がご提供するアロマ空間デザインは香り演出・商業施設が一体となりその場に訪れるお客様たちが快適性や心地よさを感じられるよう体験価値を高めることを目指しています。薬剤師の師から天然成分の機能性の手ほどきを受けたハーバルプラクティショナーであり、フレグランスコンテストグランプリ受賞の調香技術を持つ調香師が、それぞれの商業施設にふさわしい香りをお届けします。

-Exclucive